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中国石炭系ニードルコークスが抱える品質ジレンマ

  最近中国の炭素材料関係の学会の発表や、技術文献及び新聞記事をみているとよく中国国産の煤系針状焦に関する記事が多くみられる。 煤系針状焦は1970年代後半、日本で開発されたものだが、ここ数年中国でも国産化が進み、数社が工業生産に入っている。
  供給過剰気味で経営的にだいぶ苦戦しているようであるが、それ以外に品質面でも問題を抱えているようだ。高強度、低熱膨脹係数(CTE)が要求される接頭(ニップル)や高い耐熱衝撃破壊性が要求される24、28インチ以上の太物電極には依然として輸入針状焦が使用され、中国国産煤系針状焦は20インチ以下の細物電極(一部会社では24インチ電極の試生産も行われているが)で、用途は熱負荷環境の穏やかな取鍋炉(LF)用電極が主体のようである。
  種々情報を纏めると以下の2つの問題点に要約される。
  1. 輸入品は通常グレードの針状焦に加えてニップルや太径電極用の低CTEの高級グレードの針状焦の2種の販売なのに対し、中国品は通常グレードのみである。 つまり、中国品はCTEがまだ高く、低CTE高級グレードの針状焦ができていない。
  2. 石油系、煤系油系とも中国国産針状焦は粗粒が製造できておらず粉の割合が多い。
  太径電極は高い耐熱衝撃破壊性が要求されるので、その原料調整段階の粒度配合では針状焦の粒径が大きい粗粒の割合を多くする必要がある。 針状焦の平均粒径が小さく、粗粒が少ない場合、太径電極製造のための最適粒度配合が確保できず、細径電極にしか対応できないか、または太径電極を製造する場合でも細粒・粉多配合で対応するしかない。
  確かに、細粒・粉多配合の場合、製造された黒鉛電極の見掛密度や機械的強度は向上するが、耐熱衝撃破壊性は低下する。煤系針状焦製黒鉛電極の電炉煉鋼(EAF)での使用例を見ると鉄水(Hot-Metal)の使用量が多く、取鍋炉(LF)用のように熱衝撃の低い環境で使用されている。現状のEAF使用条件下ではこの細粒粉多配合の黒鉛電極でも問題ないのであろう。 又、中国の文献や学会では、煤系針状焦の欠点である気膨(Puffing)が問題となる串接石墨化(LWG)工程でも、国産煤系針状焦電極は割れずに上手く石墨化できたとの発表例があるが、注意深く読むと電極サイズは太径でも粒度配合は入荷した針状焦の粒度の関係で細粒・粉多配合を採用している。Puffingは同じ針状焦でも粒度によって異なり、粗粒ほど大きく、細粒、粉多配合ほど低い値となる。
  使用した針状焦の粒度が細かかったため、仕方なく細粒粉多配合にしたことが、結果的にPuffingを下げ、LWGが上手くいった一つの原因として考えられる。
  又、粒度だけでなく針状焦のCTEもPuffingに大きな影響を与える。今は針状焦が高CTEであるために低Puffingとなるが、これから、開発により高級グレードの低CTEの針状焦になるとPuffingの増加が懸念される。
  ある意味 現状の細粒粉多粒度と通常品並みCTEであるが故に、現状のLF用電極や、中、細径サイズ電極での用途が確保されているわけで、ここでCTEが改善された場合や、粒度が粗粒度に改善された場合 新たなPuffing問題に直面することも考えられる。
  更にPuffingは、今後LWG設備の稼働率が高くなる程、顕在化してくる可能性もある。
  中国煤系針状焦は低CTE化とか粒度の向上という一方向な品質改善だけでなく
  その品質改善による負の特性の顕在化、即ちPuffing問題に直面することになるであろう。中国のLWG技術の発展とともに注視していきたい。



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